更に、耐震補強をどう進めるというタイトルを見つけたのは15日付け地元紙のオピニオン欄。そして、生かせ震災教訓・体はも補強可能と添えられていましたので、そのまま引用させていただきます。
『分譲マンションの耐震補強が進まない。阪神・淡路大震災に遭った12年前、私たちは、“命を守る器”としての住宅を強く意識したはずなのに。被災マンションの復興を検証してきた日本マンション学会副会長の藤木良明さんが昨年秋、「マンションの地震対策」(岩波新書)を出版した。復興の現場を歩いた藤木さんは、被災者の目線で専門家としての提言をしている。震災の教訓をどう生かせばいいのだろう。あらためて考えてみようと、藤木さんを訪ねた。(宮沢之祐)
-耐震強度偽装事件でマンションの耐震性が注目された?
「いや、それはどうだろう。事件は、つまらない幕引きになった。検察は個人の資質による犯罪にしてしまい、建築業界の構造的な問題に切り込まなかった。世間は元一級建築士の愛人問題などに目が向き、マンションに対する関心は冷めた」
-構造的な問題とは?
「建築士は本来、建物を使う建築主から依頼を受けて設計し、建設会社が図面通り建設するか監理する。ところが、マンションの建築主は販売企業。設計の実務は下請けがし、安く、見栄え良くが至上命令となる。販売企業は構造設計が分からず、下請けに依存し、下請けは継続して仕事をもらおうとする。そうした構造的な問題が偽装事件を引き起こした。利益追求を第一とする経済効率主義がゆがみを助長した」
-事件が自治体の耐震診断や耐震補強の助成制度の拡充をもたらした?
「問題は、それでも補強まで進めないこと。予備診断が無料でも、精密な本診断が1千数百万円にもなったりして、住人の意見がまとまらない。そもそも一般の設計報酬に比べ、診断の報酬はとんでもなく高い。大手の構造事務所が自治体に示した額がまかり通っている。また、専有部分と共有部分とでは、補修に向けた合意形成の手続きがまったくことなる。専有部分の合意は事実上無理なのに、一括してやるから前へ進まない。そうしたマンション特有の事情を知る専門家が少ない」
-どうすれば耐震補強が実現する?
「一階がピロティ形式の駐車場や店舗で、上階の住戸と平面形状が異なるマンションは、阪神・淡路大震災の経験からも倒壊の恐れがあると分かっている。診断を受けるまでもなく、補強を始めるべきだ。まず発想を変える。大地震に遭ったとき、最低限、倒壊しないようにし、もし壊れれば直せばいい。人命が守られるように補強する。独立柱の補強や、耐震壁で上階とのバランスを整えるなど1、2階の弱い部分を補強するのには、必ずしも多大な費用を必要としない」
-補強よりも、建て替えを促す風潮を感じる?
「阪神・淡路の被災マンションに対しても、補修より建て替えへの支援が手厚かった。建て替えられるものは、建て替えればいいという市場原理を、政府のさまざまな規制緩和が後押ししている。2002年には区分所有法の建て替え要件が緩和された。しかし、区分所有者(住人)の5分の4の賛成で建て替えを決めていけば、経済事情などで参加できない少数者が住戸を奪われる。関東や東海で大地震が起きたときには、問題はもっとクローズアップされるだろう。多くのマンションは、将来とも建て替えは困難な状況にある。長持ちさせることが唯一の選択肢だ」
-専門家の役割は?
「ゼネコンには構造設計者がおり、技術力を含む備積資本がある。自分たちの建てた建物に責任を持ち、耐震補強の設計をするなど社会還元をしてほしい。マンションの保全にかかわる専門家が、そうした協力を引き出す役割を担えばいい」
-阪神・淡路大震災の教訓とは?
「マンションでの死傷者は20人前後とされ、マンションは非常に安全な建物と証明された。一方で、どんな建物が弱いかも実証された。大破しても補強され復興した例があることを忘れてはならない。補修できるにもかかわらず、多くの被災マンションが建て替えに走った。直せるのだ、という通念をつくりたい。今あるものをいかに持続させるか、その視点を大切にしたい」
ふじき・よしあき 1941年、三重県生まれ。名古屋工業大学建築学科卒。愛知県産業大学教授(建築学)。設計事務所主宰。70年代からマンション問題の実務、研究に取り組む。東南アジアの遺跡保存にも詳しい。著書に「マンションにいつまで住めるのか」(平凡社新書)など。東京都豊島区在住。』
生かせるものなら生かして欲しい。取り壊して建て替える必要などないなら、少しでも住民たちの負担を軽く、尚安全が保証されるやり方を工夫すべきだと思う。補強という方法があるなら、声高に主張して欲しい!
『分譲マンションの耐震補強が進まない。阪神・淡路大震災に遭った12年前、私たちは、“命を守る器”としての住宅を強く意識したはずなのに。被災マンションの復興を検証してきた日本マンション学会副会長の藤木良明さんが昨年秋、「マンションの地震対策」(岩波新書)を出版した。復興の現場を歩いた藤木さんは、被災者の目線で専門家としての提言をしている。震災の教訓をどう生かせばいいのだろう。あらためて考えてみようと、藤木さんを訪ねた。(宮沢之祐)
-耐震強度偽装事件でマンションの耐震性が注目された?
「いや、それはどうだろう。事件は、つまらない幕引きになった。検察は個人の資質による犯罪にしてしまい、建築業界の構造的な問題に切り込まなかった。世間は元一級建築士の愛人問題などに目が向き、マンションに対する関心は冷めた」
-構造的な問題とは?
「建築士は本来、建物を使う建築主から依頼を受けて設計し、建設会社が図面通り建設するか監理する。ところが、マンションの建築主は販売企業。設計の実務は下請けがし、安く、見栄え良くが至上命令となる。販売企業は構造設計が分からず、下請けに依存し、下請けは継続して仕事をもらおうとする。そうした構造的な問題が偽装事件を引き起こした。利益追求を第一とする経済効率主義がゆがみを助長した」
-事件が自治体の耐震診断や耐震補強の助成制度の拡充をもたらした?
「問題は、それでも補強まで進めないこと。予備診断が無料でも、精密な本診断が1千数百万円にもなったりして、住人の意見がまとまらない。そもそも一般の設計報酬に比べ、診断の報酬はとんでもなく高い。大手の構造事務所が自治体に示した額がまかり通っている。また、専有部分と共有部分とでは、補修に向けた合意形成の手続きがまったくことなる。専有部分の合意は事実上無理なのに、一括してやるから前へ進まない。そうしたマンション特有の事情を知る専門家が少ない」
-どうすれば耐震補強が実現する?
「一階がピロティ形式の駐車場や店舗で、上階の住戸と平面形状が異なるマンションは、阪神・淡路大震災の経験からも倒壊の恐れがあると分かっている。診断を受けるまでもなく、補強を始めるべきだ。まず発想を変える。大地震に遭ったとき、最低限、倒壊しないようにし、もし壊れれば直せばいい。人命が守られるように補強する。独立柱の補強や、耐震壁で上階とのバランスを整えるなど1、2階の弱い部分を補強するのには、必ずしも多大な費用を必要としない」
-補強よりも、建て替えを促す風潮を感じる?
「阪神・淡路の被災マンションに対しても、補修より建て替えへの支援が手厚かった。建て替えられるものは、建て替えればいいという市場原理を、政府のさまざまな規制緩和が後押ししている。2002年には区分所有法の建て替え要件が緩和された。しかし、区分所有者(住人)の5分の4の賛成で建て替えを決めていけば、経済事情などで参加できない少数者が住戸を奪われる。関東や東海で大地震が起きたときには、問題はもっとクローズアップされるだろう。多くのマンションは、将来とも建て替えは困難な状況にある。長持ちさせることが唯一の選択肢だ」
-専門家の役割は?
「ゼネコンには構造設計者がおり、技術力を含む備積資本がある。自分たちの建てた建物に責任を持ち、耐震補強の設計をするなど社会還元をしてほしい。マンションの保全にかかわる専門家が、そうした協力を引き出す役割を担えばいい」
-阪神・淡路大震災の教訓とは?
「マンションでの死傷者は20人前後とされ、マンションは非常に安全な建物と証明された。一方で、どんな建物が弱いかも実証された。大破しても補強され復興した例があることを忘れてはならない。補修できるにもかかわらず、多くの被災マンションが建て替えに走った。直せるのだ、という通念をつくりたい。今あるものをいかに持続させるか、その視点を大切にしたい」
ふじき・よしあき 1941年、三重県生まれ。名古屋工業大学建築学科卒。愛知県産業大学教授(建築学)。設計事務所主宰。70年代からマンション問題の実務、研究に取り組む。東南アジアの遺跡保存にも詳しい。著書に「マンションにいつまで住めるのか」(平凡社新書)など。東京都豊島区在住。』
生かせるものなら生かして欲しい。取り壊して建て替える必要などないなら、少しでも住民たちの負担を軽く、尚安全が保証されるやり方を工夫すべきだと思う。補強という方法があるなら、声高に主張して欲しい!