こんなタイトルで紹介されていたのは、地元紙が扱っている「兵庫人」。19日付地元紙、一面トップの左側で紹介されている第19部は、淡路島にお住まいの人間国宝・鶴澤友路さん。そのまま引用させていただきます。

 『94歳を迎えてなお、弟子にけいこをつけないのは盆の1日だけという。南あわじ市に住む義太夫節三味線奏者の鶴沢友路

 1998年、国の重要無形民族文化財「淡路人形浄瑠璃」に携わる舞台人として始めて人間国宝に認定された。「休めば体調が悪くなる」と、今も午前9時半から午後11時まで、自宅兼けいこ場で精進を重ねる。

 芸事好きの家庭に育ち、三味線や語り部は小さいころから身近な存在だった。「門前の小僧」を地で行くように耳で学んだ。生き別れた両親を訪ねて旅をする子を描いた「傾城阿波鳴門、巡礼歌の段」の一節を語りながら町を歩いて周囲を驚かせた。4歳のころのエピソードだ。

 12歳にして大阪で内弟子修行を初め、3年半後に帰郷。当時、島内に6,7座あった人形座の一員として島内外を巡業した。むしろが敷かれた掛け小屋で、2千人を前にマイクも使わず三味線と浄瑠璃を響かせて地力を付けた。

 淡路全体に名がとどろくよう「友路」と名付けてくれたのは、大阪の文楽三味線奏者の六世鶴澤友次郎(1874~1951年)で、23歳のころから仕えた。

 いくら懸命に弾いても「違う」としか言われず「泣いてばかりいた」。それでも「浄瑠璃の世界が、好きで好きでしょうがなかった。物語の情景や人物像を音に表せるからやな」。大阪への通い修行は毎月欠かさず続いた。

 その後、国内各地や欧米で公演を重ね、淡路人形浄瑠璃の魅力を広く海外にも伝えながら、地元の子供会や小中高校での指導に力を注いだ。人間国宝となった今も、唯一のプロ集団「淡路人形座」と、自宅に近い市立南淡中学校で週に1度、指導する。

 張りのある声と力を込めたばちさばきを座員や生徒の前で披露し、舞台と変わらない真剣勝負を挑む。「こちらが気持ちを入れれば入れるほど教え子も返してくれるんや」

 「年を取れば分かることがある」「手ではなく心と腰で弾くんだ」。師匠の友次郎が繰り返し語った意味が「最近になってようやく分かってきた」友路。90年の経験から学んだのは「苦労して盗んだこそ忘れない芸がある」ということ。しかし、弟子たちには優しい。自由に録音テープを使わせ、何度でも聴けるよう配慮する。「私のような苦労は、今の人には辛抱できんやろから」

 淡路人形座は現在、大鳴門橋記念館に併設された淡路人形浄瑠璃館で1日5~8回、公演。2011年までには新しい人形会館が福良港に建設される。

 「新会館のこけら落としに出られればいいがなあ」。健康に気を配り、この目標に向かってまい進する。(敬称略)』

 そして、6面には、『人形に「命」吹き込む情熱』として紹介されていますので、一部を引用させていただきます。

 『淡路の人形芝居には、こんないわれがある。西宮神社(西宮市)に仕える人形遣い「傀儡師」から伝わり、一体の人形を三人で操る「三人遣い」のスタイルが江戸時代中期に生まれたー。異説もあるが、明治中ごろには、島内に20を超える人形座があったとされる。』

 『人形座が公演で使う人形は、50年以上の耐久性があるが、「木偶師」と呼ばれる人形作り職人の存在は欠かせない。藤野良一は高校の元数学教師。県立三原高校在職中の1981年、同僚から誘いを受けて徳島の木偶師の弟子になった。

 現在は南あわじ市内で社会人対象の人形作り教室を開き、作品は淡路人形座や南淡中学校などで使われる。顔の彫刻や、目やまゆを動かすからくり機構が一見難しそうだが、「実は、おしろいに当たる胡粉を塗る作業の方が厄介」。温度や湿度の影響を受けやすいからだ。困難な仕事の先に理想の木偶を据え、ひたすら「気品と上品さ」を求め続ける。』

 『そもそも文学は、淡路出身の浄瑠璃語り植村文楽軒(1751~1810年)による人形芝居が大阪で人気を呼んで広まった。語りと三味線、三人遣いの人形で成立する点は淡路人形と同じだが、「野趣あふれる素朴さ」を旨とする淡路に対して、文楽は「繊細さ」が魅力とされる。人形も文楽は二回りほど小さい。』

 『三味線と語りだけで舞台を成立させ、人形を用いない「素浄瑠璃」の置くも深い。この女流義太夫節の世界で唯一の人間国宝竹本駒之助は、中学生のころ淡路で友路から「語り」を学んだ。

 大阪での内弟子時代、息を吸うタイミングが見つけられず、失神しそうにもなった。苦しい経験が今の花につながる。現在は神奈川県に住み、東京・国立演芸場などで定期的に公演する。今年、半世紀ぶりに吉田分雀と共演し、来年の公演も決まった。

 「芸が盛んだった島に生まれたことを誇りに思う」。淡路から伝統芸が広がる。(敬称略)(文化生活部・井筒尚基)』

 直接お逢いしたことはないけれど、間近で見た鶴澤友路さんは、何と気さくなんだろうと驚く。小さい小さいお体のどこからあんな声が出るのだろうと、本当に驚くことばかり。周りは人間国宝様みたいな扱いなのに、ご本人はいたって普通の女性。そこが人気の秘密だったりするのかなぁ。どうぞ、お元気で、新会館でのこけら落としにも是非姿をみせて欲しい!